2018年10月 フルムーン in Greece

10月
2018
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気がつけば、1年の半分ほどを国外の瞑想センターで過ごすことが日常となっているこの頃
これまで数々の国を訪問するなかで、はかり知れない恩恵をいただいてきました

言い尽くせない感謝の気持ちに動かされ、今年からお礼参りをするような、そんな旅路のスタートを感じています
その第一歩として、今年はニュージーランドではなくイギリスのヴィパッサナー瞑想センターを訪ね、ボランティア奉仕の日々を過ごしました

奥に見えるのは完成したばかりの円形のパゴダ 瞑想用の独居室(セル)が内在しています

ヴィパッサナー瞑想を学ぼうと思う時、私たちのグループではまず最初に10日間の瞑想コースに参加することを求められます これは、ブッダの深遠な教えのほんのプロローグ、紹介のためのリトリートにすぎませんが、より本格的に学ぼうとする人は、さらに長い期間のコースに参加してゆくことになります

このイギリスのセンターは、その長期間のコースのみを行なっている、世界でも数少ない場所です さらにこちらのセンター長さんは、日本の瞑想センターを設立してくださった初期のメンバーでもあり、その後ニュージーランドのセンター長もつとめられた経験豊かな瞑想者でもあられます 彼らとともに働く毎日は充実の日々で、楽しい奉仕の数ヶ月はあっという間の終焉となりました

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その後、わたしは休暇もかねてギリシャを旅しました

高校生の頃、“汝自身を知れ”という強烈な金言と出会い、わたしは迷いながらも大学で心理学を学ぶことを決意します さらにユング心理学に親しむことでギリシャ神話を学ぶこととなり、いつかこの古代の神託の地を訪れたいと思っていました

今では世界遺産に登録され、毎日世界中から観光客の絶えない地「デルフィ」
パルナッソス山麓に抱かれたアポロン神殿の風格は、変わらず健在です ここには、5,000人収容の劇場と、オリンピック競技が開催されたスタジアムが今もなお保存され、その規模は圧巻の大きさです

ヨーロッパ文化の源泉 野外劇場の舞台正面に、アポロンの神殿跡が残されています

イルカに変身した太陽神アポロンは、コリントス湾の砂浜からこの神域に降り立ちました “ドルフィン”という名は、この地のデルフォイから派生した名前と言われています 世界の中心(へそ)と考えられ、巫女たちにより告げられた詩句は、時にまつりごとの重要な決定にも影響を与えました 先の格言以外にも “過剰の中の無”や“誓約と破滅は紙一重”といった名高い神意を、今に伝えています

ローマ帝国やキリスト教統治の始まる以前、古代ギリシャ文明の全盛期でもあり、それはゴータマ・ブッダの登場とも重なる時世 紀元前500年とは、ブッダ以外にも世界中で賢人たちが同時多発に出現したことで知られる、いわゆる”枢軸時代”なのです

仏典の番外編のなかにも、古代ギリシャ王とインドの出家者(比丘)との問答が収められています 王はのちに出家し瞑想者となりますが、東は極東の日本まで、そして西でも、南欧のこの地まで確かにブッダの教えが伝播され、思想交流のあったことがわかっています

この時代の伝聞書はたいへ興味深く、インド人は嘘をつかないことや、女性の瞑想者も存在し、彼女たちが堂々と男性瞑想者たちと難解な議論を繰り広げていることなどが、驚きをもって紹介されています 性別や身分、国境、信仰を超えた当時のインドの精神文明が、どれほど自由で豊かであったかを物語っています

アポロン神のシンボル、イルカやタコ、竪琴などと並んでシングル・アイのモチーフも

この時代のギリシャの賢者ヘラクレイトスは “万物は流転する”という、宇宙法則の”無常”の教えを唱えていました ブッダは彼のことを知っていたという逸話も残されているほど ”彼がたいへん遠いところにいる”ことをご存知だったとか… この時代、西洋世界にこれ以上の洞察が深まることはありませんでしたが、現在では立派なヴィパッサナー瞑想センターが各地に設立され続けています

古代から現代に至るまで、大多数の人々に浸透している “人生楽しんだ者勝ち”という愚かな貪り 過去も未来も関係なく、今を謳歌せよという根深い過ちが世界中に蔓延する中で、今、古代の神話の叡智がふたたび息を吹き返し、人々の心の目ざめに手をさしのべてくれているように思います

神々と人間がお互いを尊重し、手と手を取りあい生きていた時代 その後の宗教や科学の登場で、人類はこの豊かな営みをすっかり忘れてしまいましたが、ブッダの教えが復興する一大エポックの現在、清らかな慈愛と彼らの助力のおかげで、私たちヴィパッサナー瞑想者は心を浄化する修習にふたたび取り組むことができているのです

アトランティス伝説の残るサントリーニ エーゲンブルーがどこまでもまぶしく輝きます